ワヤン絵本「ノントン・ワヤン」の紹介と撮影秘話

dew006.jpgワヤンの絵本が、福音館書店から、刊行されました。
本のタイトルは「ノントン・ワヤン」(インドネシア語で「ワヤンを観る」の意味)
ワヤン研究家の松本亮先生の文と橋本とも子さんの絵と僕の写真のコラボレーションです。

ワヤンを追っかけて、早20年が経っていますが、集大成をまとめた写真集が出版に至っていないのは、心苦しいのです。大器晩成、じっくり熟成してからと思っていますが、世の中不景気で、マニアックな分野の出版には、二の足を踏んで出版してくれる出版社がなかなかありません。自費出版という手はありますが、カラー全ページだと大変です。
そんな矢先、ワヤンの写真を追っかけていたおかげで、松本先生からお話があり、絵本を発刊することができました。

ワヤンは、影側とダラン側と両サイドから観れる点が面白く、特にガムラン奏者やプシンデン(女声歌手)との掛け合いのシーンが面白く、それぞれのダランによって場の盛り上げ方が違うので、興味がつきないです。今一番面白いダランは、キ・ウントゥスで、テンポがよく、徹夜の上演中、一睡もすることもなく、朝を迎えてしまいます。
ワヤンは、人間が演じるのではリアルすぎて語り尽くせないものが、一枚の牛皮で出来た人形なのに、ダランの手にかかると魂が吹き込まれ、まるで生きているかのように見える点と、物語に内包する勧善懲悪や骨肉相食む語りが面白く、またそれに見入っている観客の様子や、幼い頃に体験した村の鎮守の縁日に催された村芝居に出会ったような雰囲気に魅せられて、ワヤンを追いかけることになりました。
「ノントン・ワヤン」では、ワヤンを知らない子供たちに、少しでも興味を持ってもらおうと、ワティとビルンの姉弟の二人がワヤンを観に行くという設定で、わかり易く描かれています。演目は、「カンチルの冒険」と「デウォ・ルチ」。

今回の撮影は、カンチルの冒険とデウォ・ルチの物語に合わせて、松本先生のお宅で演出して撮りました。ワヤンに登場する人形たちは、福音館のスタジオでセットして撮りました。

ワヤンの撮影は、クリル(スクリーン)越しに影を映すものですから、フラッシュを使ってしまうと影が消えてしまいます。必ずフラッシュ発光禁止にし撮りますが、100W程度の一灯の照明のみなので、上演中は明るいレンズとブレないギリギリのシャッター速度にして撮ります。動きの速い戦いのシーンは、ブレすぎて人形の表情がわからなくなってしまうので、迫力のある戦いを表現する多少のブレを残し、裸電球色のオレンジ色と合わせるために弱い光量のフラッシュにアンバー系のフィルターをかけて撮っています。今回の撮影は、止めのシーンができたので、カメラを三脚に固定して、スローシャッターで撮っています。人形たちの実写は、金箔の彩色が飛んでしまわないように、ソフトな照明を当てて撮っています。

松本先生の軽快な文章に合わせ、実写部分の撮影を受け持ち、当初その部分を写真だけのページにする予定でしたが、橋本さんの水彩画のページとの流れを良くするために、実写写真に橋本とも子さんの効果イメージの絵を重ねることになりました。
そこで苦労したのは、写真データと絵のデータの統合でした。データの合成では、雰囲気が出ないということで、最終的には、画材紙にインクジェットでプリントをし、それに絵を描いてもらい、スキャンしました。そのおかげで、水彩と画材紙の質感を活かしつつ、写真も臨場感のあるものになりました。初めての水彩画と写真のコラボは成功して全体の雰囲気が統一されたと思います。

販路の関係で月刊誌扱いになっていますが、基本的にはムック本なので、長い間本屋に並ぶようです。興味のある方は、是非手に取ってみて下さい。そして、買って頂けたら、なお嬉しいです。(定価700円)